Calypso: WordPress.com の新しい方向性

(タイトルはあくまで「WordPress.com」についてですので、お間違いのないよう。何のこと?と思った方は、こちらの記事も合わせてどうぞ→ WordPress / Automattic / WordPress.com の違いとは。

米国時間11月23日、WordPress.com の新しいダッシュボードがオープンソース化されると同時に Mac 用の WordPress.com デスクトップアプリが公開されました。両者ともに Jetpack プラグイン連携でインストール型 WordPress サイトでも利用でき、今この記事もそのデスクトップアプリで書いているところです。

wpcom-mac-app

Calypso が意味すること

ここでは、インストール型 WordPress ユーザーや開発者にとって今回のリリースが何を意味するかについて少し書いてみたいと思います。

WordPress 開発者

多分このブログを読んでくださっている方は主にここが気になるのかなと思いますが、WordPress を使ってカスタマイズ、テーマ・プラグイン作成、もしくはホスティング環境などを提供している場合の影響です。Calypso プロジェクトの公開ページから引用・翻訳してみます。

新しい WordPress.com のコードベース(コードネーム “Calypso”)は、WordPress.com を MySQL と PHP から分離します。Calypso は100% JavaScript で書かれており、WordPress.com と REST API のみを使ってやりとりしています。[…]

Calypso はサーバー上の Node.js の薄いレイヤーを使い、Web ページをまず構築します。また、多くのロジックは、クライアント内でシングルページアプリケーション(SPA)として動作しています。この SPA は多くの外部オープンソース JavaScript モジュールを活用しつつ社内で作ったものです。Calypso は開発初期から Facebook の React ビューライブラリを導入し、他の React コミュニティ内のオープンソースプロジェクトに多大な影響を受けています。

Calypso スタック
Calypso スタック(Calypso プロジェクトページより

現在のところは、バージョン 4.4 以降から徐々にコアにマージされていく予定の WP REST API ではなく、独自の WordPress.com REST API が使われています。将来、Calypso がすべての WordPress と共に動くアプリになれるよう、来年以降の WP REST API プロジェクト進行状況によって変化をとげていく予定とのことです。

さらに、このような記述も。

これは、どんな WordPress.com のサイトまたは Jetpack 連携サイトでも動作する実装例のひとつでしかありません。私たちのゴールは、WordPress との今までとは違うインタラクション方法を紹介し、より多くの人にワクワクしてもらうことなのです。

上記の通り、Calypso は Automattic という会社が WordPress.com とデスクトップアプリのために作った実装例です。「WordPress コアが JavaScript で書き直される!?」という誤解をしている人もいなくはないようですが、そのような事実や計画はありません。

マットは Venture Beat のインタビューに対し、「WordPress のサーバーサイドとクライアントサイドの技術は分離されていくのかもしれない。でももちろんそれはコミュニティが決めることで、これからどうなるかは様子見だね」といったようなことを話しています。

開発者向けのよくある質問は、Calypso プロジェクトページの “Common questions” セクションで回答されています。

WordPress.com ユーザー

昨日 WordPress.com 日本語版ブログでの告知記事を公開しましたが、レンタルブログサービスのユーザーサイドから知るべきことはこちらにまとまっています。

新しい WordPress.com と Mac デスクトップアプリ

インストール型 WordPress 一般ユーザー(投稿者・編集者など)

Jetpack プラグイン連携済みのサイトでは、プラグインの自動更新設定や投稿などに今すぐこの Mac アプリを使うことができます。また、ブラウザでも WordPress.com のダッシュボード UI から投稿、一部のサイト設定、プラグインの自動更新などの機能を利用できます。

逆に Jetpack を使っていない、使う予定がない方にとってはこのアプリ(そして Automattic が今後公開予定の Windows/Linux アプリ)は今のところ意味を持ちません。

コミュニティの動きによっては、Calypso のような仕組みを採用した別のデスクトップ、モバイルなどのデバイス向けアプリなどが出てくることも考えられます。

ニュースへの反応

WordPress コミュニティからはいくらかの驚きとこれからの展開についての期待、そしてオープンソース、JavaScript コミュニティからは歓迎の声が。さまざまな反響は、マットの記事にまとめられています。

Facebook Open Source:

React のコア開発者:

WordPress.com のこれから

Calypso が公開されたのは、WordPress.com サービスが2005年に公開されてからちょうど10年後のタイミング。これから先、WordPress.com や Automattic がどのように変化していくのかは誰にも分かりません。ただ、この10年間を振り返ってみると、このサービスや会社が生き残るにはオープンソース文化と良い意味での自己破壊(self-disruption)精神を大事にすることや、チャンレンジを続けていくことが不可欠であるといえる気がします。

これからの10年のスタートとなる Calypso は、恐らくインストール型 WordPress のコミュニティにもいい刺激を与えるのではないでしょうか。

Calypso の誕生ストーリーをもっと詳しく知りたい方は、The Story Behind the New WordPress.com をどうぞ。


Comments

“Calypso: WordPress.com の新しい方向性” への2件のフィードバック

  1. […] Automatticは将来、Calypso がすべての WordPress と共に動くアプリになれるよう、来年以降の WP REST API プロジェクト進行状況によって変化をとげていく予定だそうです(引用元:Calypso: WordPress.com の新しい方向性)。でも公開まで一年半もいじってたソースをそんな簡単に別プロジェクトにマージできるもんなんでしょうか。Xoopsみたいにならないといいのですが……。ちなみに、NodeのMongoDBライブラリmongooseをホスティングしてるの、Automatticなんですね。知らなかった。 […]

  2. […] Automattic社の直子さんのブログ記事「Calypso: WordPress.com の新しい方向性」によると“「WordPress コアが JavaScript で書き直される!?」という誤解をしている人もいなくはないようですが、その […]

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