先週末の WordCamp サンフランシスコで、WordPress 共同創始者マット・マレンウェッグによる毎年恒例の「The State of the Word 2013」基調講演が行われました。その動画は WordPress.tv で早速公開されていましたが、Amara を使った日本語の字幕付けが完成したので要約とともに共有します。
今回の State of the Word には「CMS」とか「アプリケーションプラットフォーム」とかいう用語もちりばめられてはいましたが、WordPress が便利な機能の塊であることをあえて強調するものではない内容だった気がします。10年経った今振り返ると、WordPress の成長にはコミュニティやビジネス、プラグイン、モバイル・デスクトップアプリなどのコアソフトウェア以外のパーツを含む複合的なエコシステム全体が大きく影響してきたことは間違いありません。ユーザーの理想的な行動を後押しするためのツールを成長させていく、というビジョンがさらにはっきりしてきたのではないでしょうか。
8度目の WordCamp SF
2006年から数えて8度目となるサンフランシスコでの WordCamp。これまでの世界での通算開催数は314回、今年だけでもすでに72回となったそうです。そして、世界中で WordCamp のスピーカーとして壇上に立った人は合計1,026人。「ローカルで低コスト、たくさんの人に開かれたイベント」という最初から変わらないビジョンを実現し続けています。
また、5月には WordPress 10周年を祝うパーティが各地で開催されましたが、世界中で合計約5,000人が参加するほどの規模になったのも多くのローカルコミュニティが育っているからと言えるでしょう。
WordPress 3.6
通常 WordPress のリリースとともに公開される短い動画が基調講演中に「ワールド・プレミア」として上映されました。この動画と新バージョンの紹介は本日のリリース記事に詳しいのでそちらも合わせてどうぞ。
過去12ヶ月の振り返り
- プラグイン評価機能の改善(レビュー文が必須に)
- WordPress の歴史を記録する電子書籍プロジェクトを開始
- コアのダウンロード合計回数: 4,600万回
- 336個のレビュー済みテーマ追加
- 9,334個のプラグイン申請、6,758個の追加
- モバイルアプリの開発が加速。iOS/Android/Windows Phoneで計15回のリリース
- 新しい開発者の活躍
統計情報いろいろ
毎年恒例、ユーザーアンケートの結果など。
- 12%が WordPress 向けデスクトップアプリを利用
- 引き続き CMS としての利用が増加傾向
- アプリケーションプラットフォームとしての WordPress 利用は現在7%
- 米国での一般へのブランド認知調査結果で全体の約3割が WordPress を認知
- 世界のトップ1,000万サイトのうち18.9%が WordPress を利用(昨年比 +2.2%)
行動科学的なお話
約10分ほど(動画の19:12〜29:27頃)を割いて「WordPress がなぜ愛着を持って利用されているのか?」「それをさらに強力にするにはどうすればいいのか?」といった話が繰り広げられました。ブロガー、開発者、アプリ利用者、オープンソース貢献者、様々な立場の人をうまく誘導するために、トリガーと反応の「ループ」を固めなければ、という脳の反応や行動科学的な内容でした。
事例紹介: DMA Friends
今年は事例紹介は動画で1件のみ。「WordPress を CMS としても使える」という事例を山ほど紹介する必要がなくなったこと自体が、ある意味象徴的と言えるのかもしれません。今回は CMS というか Web サイトでもないものが登場しました。
DMA(ダラス美術館)のメンバーシッププログラム、DMA Friends の会員登録&特典引き替え用キオスクは、すべて WordPress ベースのシステムを iPad に表示させています。賞品バウチャーの印刷などとも連動しているこのシステムの動画は、Vimeo でも見ることができます。
バージョン 3.7 と 3.8 の計画
3.7 は「最下層のアプリケーションプラットフォームとしての WordPress に焦点を当てたリリース」。アンドリュー・ネイシンとジョン・ケイヴがリード開発者となり、言語パッケージ・マイナーリリースの自動アップグレードシステム(!)、パスワード周りの強化を行う予定とのこと。
3.8 は驚くべきことに 3.7 と同時に開発をスタートし、新管理画面 UI「MP6」と新デフォルトテーマ「Twenty Fourteen」を導入する予定。
同時に2つのバージョンを進めるという今までにない手法は、新機能をプラグイン形式で開発することで実現に挑戦するそうです。いずれの新機能もある程度プラグインとしてはすでに形になっているので、スピーディなリリースができるのでは?という試み。今年さらに二つのリリースが行われるかどうかについては客席からも半信半疑の反応ではありましたが、この開発手法が成功すれば今後の WordPress の進化の速度にかなり大きく影響しそうです(なぜこの方法が生まれたかについては、35:15くらいから詳しく語られています)。
これからのビジョン
さらに今後開発コンポーネントの整理も行い、各コンポーネントでのリーダーシップをはっきりさせていくという方向性も語られました。また最後のほう(51:30ごろ)では、未来の管理画面 UI についてのアイディアなども紹介されました。まだこれらは単なるブレインストーミングの段階ですが、ユーザーに使いやすく、デザイナーも含む開発者が拡張しやすいプラットフォームへ進化していくためにもプラグイン方式の開発方法が重要であることを強調していたのが印象的でした。
結びとしてマットは、「Be the change that you want to see on the web(Web 上で経験したい変化を体現する人になろう)」という、ガンジーの言葉を引用したひとことで WordPress オープンソースプロジェクトへの参加を促しました。
以上、要約といいつつ長くなりました。動画は1時間ほどあってこちらも長めなんですが、けっこうがんばって字幕をつけたので見ていただけるとうれしいです 🙂
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