「WordPress 3.x デザイン・カスタマイズ スタイルブック」書評

最近年度末ということもあってか、WordPress の書籍がいくつも発売されています。まずは第一弾として、先月発売された「WordPress 3.x デザイン・カスタマイズ スタイルブック」をご紹介します!

「WordPress 3.x デザイン・カスタマイズ スタイルブック」表紙

概要

この本が他の書籍と比べて特徴的なのは、中級者〜上級者向けのカスタマイズにターゲットを絞り、基礎的な部分は除いてあること。通常のインストール方法やテーマ・プラグインカスタマイズの基本的な情報は載っていませんが、その先のカスタマイズを知りたい人には逆に良いと思います。CSS、HTML についても理解済みの方が対象です。

WordPress だけではなく、Movable Type、CSS など多数の Web 関連書籍を出版されているエ・ビスコム・テック・ラボさんの著書。表紙のデザイン、内容的にも2010年9月に書かれた「WordPress 3 サイト構築スタイルブック」の続編的な位置づけとなっているようです。

初版第一刷執筆時の対象バージョンは 3.3.1 で、フルカラー320ページです。

内容

この本の章構成は以下のとおり。

Chapter 1: ネットワークによる複数ブログの管理と構築
「サイトネットワーク(= マルチサイト・複数ブログ)」を使ったサイトの組み立て方が基本設定から順に書かれています。ネットワークのルートのサイトに加えて3つの子ブログを作ります。
Chapter 2: カスタム投稿タイプによる複数ブログの管理と構築
概念的な分け方として「複数ブログ」と書かれていますが、インストールする WordPress の(いわゆる)ブログ数はひとつです。カスタム投稿タイプによる3つのトピックを持つサイトを作るチュートリアルです。
Chapter 3: ツリー構造のページの管理と構築
親ページ・子ページといった階層を持たせることができる、固定ページを使ったサイトの構築例です。ここでも1、2章でサンプルとなったサイトのように3つのセクションにわかれたサイトを固定ページを使って作っていきます。
Chapter 4: スマートフォン&タブレットに最適化する
PC 用テーマをそのまま表示、プラグインを使った iPhone 風 UI での表示、レスポンシブデザイン向けの CSS の切り替え、プラグインを使った専用テーマの切り替えという4つの方法が紹介されています。
Chapter 5: ユーザーと管理画面
複数ユーザーの管理の方法や、User Role Editor プラグインを使ったユーザー権限のカスタマイズ方法について書かれています。Chapter 1-3 で作ったようなセクションに分けたサイトを作った場合などに、権限の範囲を細かく分ける必要があれば役に立つ情報です。
Chapter 6: カスタマイズ + α
ダッシュボードのサイドバーや投稿編集画面など、管理画面のカスタマイズ方法が紹介されています。混乱を減らすために表示項目を削除したり、投稿のメタ情報を入力するボックスを追加したりといった内容です。
APPENDIX: スタイルシートの設定
書籍内でサンプルとして作ったサイトのスタイルシートがページごとに解説されています。
TAG & FUNCTION: 機能別テンプレートタグ&関数一覧
書籍内で出てきた WordPress テンプレートタグと関数に限定して簡単な機能紹介をしています。
「使い方」ページ。中身はこのようにカラフルです。

サンプルサイトを使った3つのサイト制作方法が分かる

文章量としては Chapter 1、2 がそれぞれ同じくらいで、両方合わせて全体の半分くらいを占めています。

Chapter 1 で説明されているマルチサイトネットワークの使い方は、Movable Type の1インストール・複数サイト構成に慣れている方にはなじみやすい形態かもしれません。一方、WordPress のマルチサイトはもともと WordPress.com のレンタルブログサービスのようにユーザーとブログを多数持つ「ネットワーク」を作る目的で開発されたものため(「WordPress らしい使い方」という意味では)ここでのサンプルサイトのような場合、Chapter 2(複数のトピックはカスタム投稿タイプやカテゴリーなどのタクソノミーで分ける)の方が多いケースかも?と思いました。

もちろんサイトの要件や構築方法はさまざまです。例えばユーザーのアクセス範囲制限をするためマルチサイトの方がやりやすいという場合もありますし、複数の部署や支店の子サイトのコンテンツを集約して表示したい時には Chapter 1 の方法も役に立つでしょう。条件が異なる実際の案件においてどの機能を使うかという判断をするには、それぞれ機能の特徴の使いどころをよく把握しておく必要があります。

こういう人におすすめ!

シングルインストール版 WordPress のデフォルト機能をひと通り理解して CMS としての使いこなしをもっと理解したい方は、この本で、

  • マルチサイトネットワーク
  • カスタム投稿タイプ
  • 固定ページ

を使ったやり方が学べます。3セクションを持つ同一のサンプルサイトを元にしたチュートリアルなので、ある程度概要を知っている人ならじっくり読むだけでもそれぞれの特徴が分かると思います。

この本の前書きにも「WordPress の複数サイト管理は、自由度が高すぎて使いこなしにくい(と言われることもある)」というような記述があります。たくさん機能が揃っている = サイトの作り方がひとつではない、ということで混乱してしまう可能性も確かにあるでしょう。一方、作り方がひとつではない = 最適な方法を選べば特徴を活かして作れる!ということも言えるので、一歩踏み込んだカスタマイズのヒントをこういった本などで学んでみてはいかがでしょうか。

関連リンク


引き続き他の本についてもレビューを書いていきますので、これから WordPress の書籍購入を考えている方の参考になればと思います。最後になりましたが、マイナビの角竹さん、ご献本どうもありがとうございました!


Comments

“「WordPress 3.x デザイン・カスタマイズ スタイルブック」書評” への2件のフィードバック

  1. 書評を読んでいるだけで、購入したくなりました!

    1. ありがとうございます!

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