WordPress のライセンスである GPL が保証する自由についての意見をマットがブログに書いています。先日迎えたアメリカの独立記念日にからめたエビソードも添えられて、うまくまとまっているなと思うので、英語ですがよかったら原文も読んでみてください。
ちょっと長いので日本語で解説的なものをしてみます。
事の始まり(?)は MarsEdit などのソフトを作っているダニエル・ジャルカットのブログ記事「Getting Pretty Lonely」。先日の「テーマも GPL ライセンス」という告知の後に書かれたこの記事で彼は、「WordPress は GPL ライセンスだ、というのを説かれる度に冷めた気分になってしまう。もっと本当に自由な、おおらかな基準のライセンスの方が自分にはしっくりくる」「GPL ライセンスはプロジェクトに参加しにくくさせる効果がある」というようなことを述べています。
GPL は「公開されたソフトウェアは、誰でもが利用・再配布・改変できるライセンスを継承しなくてはいけない」という「コピーレフト」という考え方をとっています。これは、自由を守るための不自由なのでしょうか?
マットの意見は以下の通り。
- 本格的にサイトを考えているクライアントのうち、GPL だからといって WordPress の利用を選択しなかった例はいままでにない。また、競合ソフトウェアと比べた現在の WordPress の普及状態を見ると、ライセンスのせいで導入にマイナスの影響があったという主張はしにくいと思う。
- WordPress ではサードパーティ拡張機能、プラグイン、テーマのコミュニティが非常に盛ん。ライセンスが GPL にもかかわらずこうなっているわけではなくて、逆に GPL のおかげ。
- たとえば WordPress テーマでしばらく制限的なライセンスが多く使われていたように、GPL が実際には適用されていない状態も何度も目にしてきた。こういうサイクルが始まるといつも、開発者が再度コードをオープンにし始めるまで、その部分での WordPress のイノベーションが失われる。
さらに、以下のように記事を結んでいます。
GPL は、(開発者ではなくて)ユーザーの自由を保護するために作られました。大統領ではなくて、国民を守るために作られたアメリカの権利章典と同じです。GPL は、開発者とユーザーの間にある非常に不均等な力関係に対して抑制と均衡を取り入れてくれます。GPL が言おうとしていることはひとつだけで、それは「このライセンスの制作物や同派生物を使うユーザーの権利を奪ったり侵したりすることはできない」というものです。他人の自由を侵害しないなら、それ以外のことはほとんど何をしてもかまわないんです(どこかで聞いたことがあるフレーズですよね?)。
ソフトウェアの自由というのは僕にとって上記のようなことで、そのために争ったり擁護することが簡単ではなく、人気のないことでも、やろうと思うほどに強く信じています(特にこの週末に、イギリスからの「フォーク(分岐)」であるアメリカの独立記念日を祝いつつそう思いました)。
コメントで、「でも、GPL に従うとすると、他の人が作ったプラグインやテーマをダウンロードして、自分のサイトにアップして売ったりもできるってことだよね?これじゃソースを販売するビジネスがやっていけないんじゃないの?」という意見がありますが、これに対し、「実際にそういうことが起こった事もあるけど、他のライセンスのプログラムが海賊版に影響された以上の大きな影響はないと思う。WordPress.com もこれまでにそういう競合者がいたけど、結局はコケて僕たちのサービスのユーザーを増やすことにつながった」と答えています。
あくまで GPL へのポジティブな姿勢を崩さない WordPress ですが、これを理想主義すぎる、非現実的、かたくなすぎる宗教みたい、などなど、いろいろ批判する方法もあるでしょう(って今、批判してたわけではありませんよ! 😀 )。
オープンソースでもそうでなくても、ソフトウェアの開発プロジェクトには色々な目的があると思いますが、WordPress について少なくとも言えるのは、このプロジェクトの第一の目的はソースの代償として一部の人が大儲けをすることではないということです。だからといってクライアントのためにプラグインを開発したり、WordPress テーマを作ってお金をもらう事が悪いわけではないし、私自身もそうしてきた一人です。
でも、考えてみれば、こういったことが堂々と、自由にできているのは WordPress が GPL ライセンスによるソースの公開と共有を推進して、ソフトを成長させてきてくれたからこそ。WordPress の開発者たちはその連鎖を広げて、もっと便利なツールにしていくことや、そのツールを使って利用者がいろんな自由を手にすることを望んでいるんだと思います。利用が強制されているわけではないので、それに賛同できない人は他のライセンスのソフトを元にするなり自分で新しく作るなりすればいいだけだと思います(排他的に言っているのはなくて、現状から言ってそうするのが自然だと思うので)。
というわけで、タイトルの質問、「GPLは WordPress を不自由にするのか?」の答えは、私は NO だと思います。
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