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WordPress のブログから CMS への変化と、アプリエンジンとしての最新事例

昨日の WordCamp サンフランシスコ基調講演はかなり盛り沢山の内容でしたが、その中でも印象に残った点のひとつは「WordPress はブログとして誕生し、CMS として定着し、そしてアプリを動かすエンジンとしても使われ始めている」といったくだりでした。

この捉え方には賛否両論があるだろうし持ち出すのは慎重になってしまうんですが、はっきり書いておくと「WordPress は Web アプリケーションフレームワークだ」「いや、そうではない」という議論がしたいわけではありません。「今 WordPress はこんなふうにも使われてるよ」という実際に今起こっている開発のトレンドのひとつとして、基調講演レポートで挙げた事例の一部を追記で紹介してみたいと思います。

ワシントン大学の施設ディレクトリ

Google Maps API と WordPress を組み合わせた地図ベースの施設情報ディレクトリ。各建物がカスタム投稿タイプのひとつの投稿として登録されているようです。

興味深いことにこのサイトについて調べていたら、大学の Web チームの資料が公開されているのを発見しました。7月の月例会議の記録によると「Plone から WordPress への移行」とあり、その理由なども詳しく書かれています。移行の過程もオープンに共有されている感じなので、また今月末 Wiki をチェックしてみると面白いかもしれません。

サンパウロのお祭り Baixo Centro のイベントサイト

こちらもイベントの内容を地図に配したサイトですが、各ロケーションがその詳細を含む投稿のモーダルポップアップに紐付けられているという、上記の例よりは比較的シンプルなつくりになっています。

街全体で行われるようなイベントの時って場所やコンテンツの条件をもとに柔軟に検索ができると嬉しいですが、このサイトでは検索結果もマップに表示されてわかりやすいです。

TV 視聴者向け「セカンドスクリーン」コンテンツ

こちら、サイト自体の試みのほうも興味深いんですが「セカンドスクリーン」というのはテレビを見ながら見る、2つ目のスクリーンという意味。多くの場合、iPad などのタブレットだったりスマホだったり。

アメリカのテレビ局 AMC は、Breaking Bad というドラマを GetGlue というサービスに連携させています。このドラマが始まると数分で1万ユーザーが「TV チェックイン」するそうです。日本でも番組にチェックインできるサービス・アプリとして TVCheckあにみたといったものがありますね(メディアチェックインについての関連記事)。

Breaking Bad の Story Sync では場面のグラフィックや、このシチュエーションに賛同しますか?といった簡単な投票の結果も共有できるようなコンテンツページを WordPress で公開しています。チェックインではここまで粒度の細かい番組情報は(自分で入力しない限り)共有できないことが多いので、Facebook や Google+ などではとくにフォロワーの目を引く可能性が高そうです。

すでに番組が終わっていて、すべてのコンテンツが公開されている Story Sync のページ例は、こちらコメントが4500ほどついています。

WordPress が「何であるか」の定義には意味がない

数年前、WordPress as CMS の流れが始まった頃にも、WordPress は CMS だとかそうじゃないとかいう声がありましたが、時間が経ってみるとそういった議論自体にはそんなに意味があったわけではない気がします。マットは常に「CMS という用語にそんなに意味があるわけではないし、最高のパブリッシング・プラットフォームを作るのが僕たちのゴール」というスタンスでした(関連: WordPress の「徹底的にシンプル」な未来: マットとアニール・ダッシュの対談)。

Form follows function」という建築関連のフレーズにもあるように、WordPress の「かたち(form)」も、機能や目的(function or purpose)に合わせてオーガニックに変化してきています。開発者のイノベーションとユーザーのフィードバックが、今の WordPress を作り上げてきたのであって、かたちを先に定義して、それに合わせて機能を作りこんでいくという方法論では、同じような成長はなかったはず。

ここでの例のように、今までにないものを作るため、新しいことを試してみるための柔軟なツールとして WordPress がもっと使われていくことで、WordPress 自体の進化の方向性も決まっていくのだと思います。ここで挙げたものはほんの一部ですが、どれも生活に密着したアクションを便利にするためのツール。生活の中で Web にアクセスする時そばにあるデバイスがタブレットやモバイルであることもこれから多くなっていきそう、ということも WordPress の未来に大きく影響していくはずです。

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