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WordCamp サンフランシスコ 2009 レポート: その2

レポートその1に引き続き、今回の WordCamp のプレゼンの中でも一番 WordPress 関連の濃い話が多かったということで、マット・マレンウェッグ氏による「The State of the Word」の内容について少し詳しく取り上げてみたいと思います。

WordPress の成長

WordPress.org は順調に成長中。1年前と比べるとダウンロード数が倍になっているとのこと。そのうち、英語圏外からの合計がとくに伸びているそうです。ダウンロード数はリリースの回数が多くなるほど増えるので、毎年平等に比べるのは難しいと思いますが、「ワンクリックアップグレードのおかげで新しいバージョンにすぐにアップグレードしてくれる人が増えているはず。これはセキュリティ面で良いこと」と言っていました。
WordPress.com の方はさらに詳しい統計がとれるので、投稿数、コメント数、さらに Press This ブックマークレットからの投稿の数まで公開していました。

WordPress のビジョン

WordPress は、「より、『目に見えない存在』にしていきたい」とのこと。よく、良いデザインはデザインであることに気づかれないようなものだ、と言われたりしますが、そんな感じで使っているのも忘れるようなツールに近づけていきたいということですね。現在 Google Gears のオプションもありますが、オフラインでもオンラインでも体感速度が同じになるくらいのスピードが最終的な目標と言っていました。

非 GPL テーマについて

いわゆる「プレミアム」テーマや「プロ」テーマとも呼ばれる、ソースコード非開示のテーマ。しかしマットはこれらの呼び方は使わず、非 GPL/プロプライエタリテーマと呼んでいました。最近今までに増してこういった非 GPL テーマが広く使われているのを受けて、この話題についてはかなり詳しく取り上げていました。ポイントは、

テーマを有料で販売するのもいいし、サポートや付加サービスでお金を取るのもかまわない。ただ、「複製や改変バージョンを頒布するならソースを公開する」というライセンスは守って欲しい

ということで、WordPress に依存するプログラムであるテーマ(プラグインもですが)には GPL ライセンスを適用して!と訴えていました。

これは、テーマ作成者が儲かるのを阻止したいというわけではなくて、WordPress のオープンさ、自由さを続けていくため、と、後の質疑応答でも説明していました。例えば現在あるテーマの多くが Kubrick、Hemingway、Sandbox、Thematic などの有名テーマをベースにしたものであり、これらのソースを多くの人が手に入れることができたからこそ生まれたものがたくさんあります。そういった優れたコピー、改変、創作を促進していきたいということのようです。

これにあたって、GPL 対応テーマ制作者を紹介するページを作ることも考えている、とのことです。同様なプラグイン作者用ページもあるといいですね。

WordPress とビジネス

Alex King 氏を壇上に上げて、WordPress に依存したビジネスとして成功している例としての紹介がありました。彼の会社、Crowd Favorite は、WordPress コンサルティングや開発を行うことで成長していっています。オープンソースとうまく関係を保ちつつ収益を上げているモデルとして、同社の展開は参考になります。

さらに、フリーランスの求人サイト Elance や oDesk でも WordPress のスキルは人気上昇中、と紹介していました。プレゼンの中では確か Elance の人気ランキングは13位あたりでしたが、最新の記事では全体の8位までさらに上昇しています。

ローカリゼーション

日本語ユーザーとして興味があるのはやっぱり、ローカリゼーション。WordCamp の少し前にはメーリングリストにて GlotPress という翻訳用ツールの開発も告知されていましたが、このような形でまずは WordPress コア、プラグイン、テーマなどの翻訳がしやすくなる仕組みを作らないと、という姿勢が感じられました。

もちろん、仕組みを完成させて…というところから始めないといけないので道のりは長いわけですが、少し時間がかかっても土台をしっかりさせるのはきっと良い結果になるはず。そこまでリソースを注いで、英語圏以外のための仕組みを作る動きは歓迎したいです!GlotPress についてはもう少ししたらまた書いてみたいと思います。

モバイル、リアルタイムコミュニケーション

iPhone アプリに加え、Blackberry アプリも制作中、と公開。Jabber ボットを使って WordPress.com の投稿をブログユーザーに IM で知らせる試みについても軽く触れていました。このへんの「リアルタイム」性は、やはり Twitter を意識しているというのはあるのでしょうねー。

そして究極の「リアルタイムコミュニケーション」でもある、WordCamp などのイベントにも注目しているという話もしていました。ネットでは全世界につながれるけど、そこからローカルやリアルな世界で人と会ったりつながったりしていくことの面白さは私も実感しているので、これには納得。コミュニティを成熟させていく活動の一環として、こういったことはとても大事だと思います。

WordPress の将来

そして最後にまとめとして語った「WordPress の将来」は、新しい機能のことなどではなく、「参加」について。

これからの Web や WordPress には、参加すること(involvement)が大事になっていく

というやや抽象的ながら WordPress らしい結びだったと思います。具体的には、貢献が目に見えて分かりやすくしたり、WordPress に参加している人たちがお互いにつながりやすくしたりという工夫をしていきたいとのこと。いろんな方面からの協力者にうまく参加してもらえるようになりたい、と語っていました。

かいつまんでの紹介でしたが長くなってしまいました!それではレポート第3弾もお楽しみに!

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