WordCamp 2007レポート(1日目、後編)に引き続き、7月22日の前編リポートです。
2日目の朝は目に見えて観客が少ない!席の空き具合からいって前日比3割減、といったかんじでした。前日のパーティのせいでしょうか??
1日目は「コンテンツ制作者向け」だったのに対し、この日は「開発者向け」の内容だったせいもあるかと思います。WordPress.comのユーザーの人などは2日目の話はあまり興味がなかったのかも。まあ、この日のスケジュールは冷静に考えると日曜の朝から聞くにはかなりgeekyな話ではありましたが(笑)
「HyperDB&WordPressの高性能化」
WordPress.comのサーバ管理などを担当しているBarry Abrahamson氏、Automattic創始者のMatt Mullenweg氏が、WordPressのパフォーマンスをより良くするための努力について話ってくれました。
WordPressの魅力の上位にくるのはその素早さ。そして、1千万ページビュー/日のWordPress.comサービスにも耐える拡張性。これらの背景にあるのはLAMP(ただしApacheではなくLitespeed)+APC+カスタムキャッシュ機能(WP-Cacheプラグイン)。それからHyperDBと名付けられた独自開発のDBクラス、Poundによるロードバランシングなどなど。数字やさらに詳しいサーバーセットアップを知りたい方は、スライドをご覧ください。
WordPressが性能を高めようと日々努力しているのは、とにかく「ユーザーに使いやすいものにするため」という考え方があるというのがはっきり伝わってきましたね。つまり、単にさばけるページビューの数字を上げること気にしているわけではなくって、「人気のあるリンクサイト(たとえばDigg.comなど)にリンクされたときでもサイトが落ちないようにするには?(=WP-Cache利用、画像ファイルなどを別サーバに移動する)」とか、「記事数など、DB内の格納データが非常に増えた場合どうやって最適化するか?(=HyperDBやキャッシュの活用)」など、実用的な質問にも、例を挙げて積極的に回答してくれていました。
「ニューヨーク・タイムスのブログ」
時間的には短いセッションでしたが、興味のある内容だったのでとても面白かったです。NYタイムスでは、現在100を超えるブログを公開しています(そのうちアクティブに更新されているのは30〜40前後)。なんとこれら、1つのWordPressインストール&1つのテンプレート(テーマ)から成っているそうなんです(WordPress MUではありません、普通のWordPress)!えーっ。いったい、どういうしくみになっているんでしょう。
今までブログを書いたことのないコピーライターなどに、ブログにしっかり参加してもらう&続けてもらうには、コメントをはじめとする読者とのやりとりを「楽しい!」と思わせるのが鍵、とのこと。ライターのためにも、読者のためにも、コメントなどのフィードバックをサイト内で目につくようにデザインしていくのも大事…と言っていました。例えば、NYタイムスのブログでは、「今、気になるコメント(Comment of the Moment)」と題して、サイドバーで大々的に興味深いコメントをフィーチャーしたりしています(例:City Roomブログ)。
ほかにも、関連した話題を取り扱ったサイトにしぼったブログロール(サイドバーなどに配置した他サイトへのリンク集)の重要性や、ブログライター&管理者に対するトレーニング資料をWordPress.orgのドキュメンテーションページでシェアしていこうじゃないか、という呼びかけなど。たしかに、それぞれのWeb制作者や企業がばらばらに資料を書くより、みんなで基本的かつしっかりした説明文をドキュメンテーションとして残していったほうがお互いにいいですよね。私も今の会社で資料を書く機会があったので、なにか貢献できればいいなーと思っています。
「次世代ソーシャルネットワーク:大規模な社会システムをつくる」
「パワーポイント文書のFlickr」とでも言えるような、SlideShow.comの起業者であるRashmi Sinha氏のプレゼン。タイトルはともかく、SNSサイトを作っている人以外にも興味深い内容でした。「次世代」というのは、人と人のつながりや話し合うトピックだけをもとにしたSNS(Mixi、MySpace、Facebook)ではなく、デジタルデータを共有することによって成り立つSNS(YouTubeの動画、del.icio.usのブックマーク、Newsvineのニュース記事、など)。
「多くの人が使うサイトのシステムを作るデザイナーは、そのサイトが与える長期的な影響も予測しておくべき」という考え方には共感します。ここで言う「デザイナー」は、表面的なUIやグラフィックのことというより、サイトが形成する文化なども含めた大きな意味での「設計者」といった意味合い。べつにMySpace.com(アメリカで人気のあるSNS。日本で言うMixi的存在)を作っているわけではなくても、利用者に人気のあるサイトを作るということはつまり人々のWebサイトの見方や使い方などにも大きく影響を与える可能性があるということ。これは別にサイトの利用者がサイト内外で問題を起こしたときにそれがまるっきりサイト制作・運営者の責任である、とかいうことを指しているわけではないです。
たとえば、「人気のあるコンテンツに重点を置いたナビゲーション」や、「利用者の好みに合いそうなコンテンツをたくさん表示させるレイアウト」。前者は「多数決人気投票型」文化をつくっていくでしょうし、後者は「個人の好みをつきつめていく」文化を加速させるでしょう。サイトの持つコンテンツは全く同じでも、見せ方や誘導の仕方によって、利用者の使い方は変わってきます。
本当の意味で成功するサイトをつくるには、どんなコンテンツを用いてどこに配置すればいいのか?ということだけを考えるんじゃなく、そのサイトを通して体験してもらいたいことを常に中心に置いて、そのためにはどういった姿勢でデザインしていけばいいのか?を頭においておくことが大事です。
まとめたのでずいぶん抽象的になってしまいましたが、詳しくは彼女のスライドもご覧ください。32枚目からのTIPSまとめは実際にユーザ参加型サイトを作っている人に特に役に立ちそうです。
WordCamp 2007: 2 日目 | わーどぷれすっ! へ返信する コメントをキャンセル