Webstock 2013 レポート【その1: セッション】

先週ニュージーランドのウェリントンで開かれた Webstock というイベントに参加してきました。Automattic のスポンサーブースの手伝いで行ったのですが、ブースにいたのは休憩時間のみだったのでカンファレンスもしっかり見ることができてよかったです。動画が公開される予定とのことですが、個人的に特に印象に残ったものをピックアップしてご紹介したいと思います。

工業化された無知(クレイ・ジョンソン)

オープニング・セッションは、2008年度にオバマ大統領のオンラインキャンペーンを担当した Blue State Digital 共同創業者のクレイ・ジョンソン。食べ物から摂る栄養を選ぶべきであるように、情報も「ジャンクフード」的なものを意識的に排除して取得していくべきだという話。

Webstock

具体的なステップとして、

  • SNS や特定のサイトからの情報取得を時間で制限する
  • 消費者ではなく、製作者になる(彼の場合、朝起きたらすぐに文章を書くとのこと)
  • 消化しやすいけれど部分的な情報ではなく、分析に時間がかかるけど濃い情報も取得・提供するように心がける
  • 仕事において、ジャンクではなく意義のあることを行う(”Work on stuff that matters”)

といった点が挙げられていました。「正しい情報への自由なアクセスを!」というけっこう固いテーマを取り扱いつつ、ポップカルチャーや食べ物など身近な比喩をたくさん使ったプレゼンは分かりやすく、楽しめました。メッセージを伝えてアクションを起こさせる、というプロならではだなあと感心してしまいました。彼の話したコンセプトについて詳しく知りたい方には「インフォメーション・ダイエット」という本もおすすめです。

モダン Web デザイナーのワークフロー(クリス・コイヤー)

CSS Tricks や Smashing Magazine などでフロントエンド技術情報を提供しているクリス・コイヤー。デザイナーの視点から、ローカル環境の構築・バージョンコントロール・CSS プリプロセッサなど仕事をスムーズに進めるためのツールをよく知ることの重要性を話していました。完全に Mac の環境の例ではあったのですが、彼のおすすめする具体例の詳細についてはノートをどうぞ。自身で開発に関わったデザイン用サンドボックスアプリ、CodePen の話もしていました。

パックマンからデザイナーが学べるレッスン(ジョン・グルーバー)

Daring Fireball のジョン・グルーバーの題材はパックマン。子供の頃どれだけパックマンを愛していたかを語りつつ、世界中で人気を博したこのゲームの魅力の理由を分析していました。そのエッセンスは以下の4点。

  • 楽しい(Fun)
  • シンプル(Simple)
  • わかりやすい(Obvious)
  • 挑戦しがいがある(Challenging) 

ヒットに繋がるアプリやサービスを作るときには、それはひとことで説明できるものか? というのを自問するべきだ、と結んでいました。

アダプティブ・コンテンツに適応していくこと(カレン・マックグレーン)

Webstock

ニューヨーク・タイムズ、コンデナスト、タイム・インクなど大手新聞社や出版社のデジタル戦略をアドバイスしてきたカレン・マックグレーン。キャッチーな引用を散りばめつつコンテンツを多様なメディア(モバイルブラウザ、テレビ画面、アプリなど)へ自由自在に適応させていくために大事な考え方を語っていました。旧体制の会社が陥りがちな間違ったやり方を単に指摘するだけではなく、NPR の「COPE(Create Once, Publish Everywhere)」 や TV Guide の長期的コンテンツビジョンといったモデルケースを具体的な例とともに挙げていました。CMS についての言及で、多くのケースではまだまだワークフロー UX の最適化には至っておらず、「スタッフがコンテンツを作成するべき時にシステムの使い方に苦心しているようでは、時間やお金の無駄」というようなことを言っていたのが印象的でした。

昨年9月に彼女が同じトピックについて話した際のプレゼンのスライドや動画がすでに上がっていますので、さらに詳しく知りたい方はぜひ。

メディアを発明する(ロビン・スローン)

 「メディア発明家」を名乗るロビン・スローン。先日このブログでも少しだけ触れた「tap story」の原型となるものを考えだした本人でもあります。書籍や映画(活動写真)が生まれた歴史背景に遡りつつ、新しいフォーマットのメディアが発明される時にはどんなことが起こるのか?メディアが変貌を遂げている現代にそこから学べるものは何か?という内容でした。

  • 書籍にしても動画にしても、最初はトライ&エラーの連続だった
  • 初期のコンテンツにはくだらなく見えるものもあったが、その事自体とメディアそのものの重要性はまた別

スマートフォンやタブレットというまったく新しいデバイスが普及し始めているこのタイミングは、エジソンが「ブラック・マライア」と呼ばれた小屋のような撮影所で実験を繰り返していた10年間と同じようなポイント。新しい表現やコミュニケーション方法を生み出す可能性は今を生きる私達が握っているんだ、という視点を改めて実感させてくれたプレゼンでした。


これだけでは書ききれないのですが、メモを取っていたものだけまとめてみました。全体的にコンテンツやコンセプト寄りの話が多く、これから Web に関わっていく上での姿勢をどうやっていくか?という考え方へのインスピレーションを与えてもらえるプレゼンが充実していました。詳しくは前述のあとで公開される動画や、以下のリソースもどうぞ。


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください