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ヨリス・ライエンダイク氏イベント「ヨーロッパのジャーナリズム」

オランダ大使館で先週開かれたヨリス・ライエンダイク氏のイベント、「ヨーロッパのジャーナリズム」に行って来ました。ライエンダイク氏は、オランダ新聞社の中東特派員を経て、現在英国ガーディアン誌の経済ブログ(Banking Blog)を担当しています。

今回のイベントは彼の著書、「こうして世界は誤解する」の日本語版発売による来日に合わせたもの。この書籍はオランダで2006年に発行されてベストセラーになったそうですが、6年を経てもここで彼が書いているいわゆる「伝統的」メディアに関するフラストレーションは同様に存在しています。

学習曲線を共有しよう(”Share your learning curves”)

そういった問題に対してライエンダイク氏が提案するのは、学びのカーブ(学習曲線)の共有(”Sharing learning curves”)、という手法。

私達が知りたいニュースというのは、自分を取り巻く現実をもうちょっと深く理解する手がかりとなる情報。すでに知っていることがベースにないと理解するのが難しすぎて興味を持てないけれど、知りたいと気になったことなら多少手間がかかっても調べたくなる、というのはありますよね。

その過程で得た情報は完全なものではなかったとしても、共有してフィードバックを受けることによって理解が深まっていくというサイクルはブログを書くと実感できます。彼がガーディアンのブログ上で実践している「伝える側が知っていることとそうでないことの境界をはっきりさせて共有し、フィードバックを受けて段階的な知識の積み重ねをリードしていく」というのはその一例です。

彼はオランダの TEDxAmsterdam でも同様のトピックについて語っています。日本語字幕も付いているので見てみてください。

このイベント自体は1時間ほどの短い講演でしたが、そのうち1/3強の時間を取って質疑応答を行ったり、その後のレセプションでも参加者と積極的に話してくれたのが印象的でした。

レセプションでライエンダイク氏は、これからのジャーナリズムを変えていくのはテクノロジーだけではなくてやはりそれを使う人のほうだと思う、と話していました。ウェブのもたらすインタラクティブ性によりフィードバックをしたり受けたりしやすくなることによって情報の提供者がその届け方や内容を工夫できる、というのはもちろん、そうやって提供されたニュースがどのように共有されて広まっていくのかもニュースに影響を与えていっていると思います。

身近な人や自分が信頼を置いているジャーナリスト、ブロガーなどとニュースに対する反応を共有・比較し、背景を理解するきっかけを得ることで、世の中のことをもっと「分かる」ことが可能な世界に私たちは近づきつつあるのかもしれません。メディアから送られる情報を鵜呑みにするだけではなく自分の頭で判断する力は、その世界で生きていく中でこれまで以上に必要になっていくはずです。

最後に一枚。ライエンダイク氏が書籍を手にした写真を撮らせてもらえますか?と聞いたら、別の人に撮ってもらうことになったのでツーショットです(そして本は写っていなかった・笑)。

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