主人公はコロンビアの花工場で働く17歳のマリア。いわゆる「普通の」ティーンとして過ごしていた彼女が、ドラッグの運び屋としてアメリカに来ることになる…というお話です。
前半ではマリアとその家族、友達、ボーイフレンドなどを通してコロンビアの生活を垣間見ることができます。日本やアメリカでも若者がマリアのように「自分の居場所がない」と同じているのは決して珍しいことではないはずだけど、彼女は誰に頼ろうとするわけではなく、自分の力でなんとかしようと前へ進んでいきます。
中盤の入国審査のシーンは本当にはらはらするし、その後もいろいろとトラブルに見舞われ…。だけど必要以上にドラマチックではなく、まるでドキュメンタリー映画のように物語は進みます。どんなシーンでも目の前の出来事をまっすぐに受け止めて、危険を知りながらも自分なりに最善を尽くして生きようとするマリアは、まだ若くて知らないことも多いけれど、生きるうえで一番必要な事を分かっているように見えた。わぁーっと泣くわけではないけど、最後にかけてかなり感情移入してじわりときてしまいました。表面的には静かに見えて、とても“パワフル” な作品だと思います。
このタイトル、とても好きです。邦題は「そして、ひと粒のひかり
さらに、オフィシャルサイトからリンクされている、MSNBCの記事、“Caring for ‘drug mules’ who perish on the job ” を読むと、この映画がいかに現実に近いかを知ることができます。映画にも出演しているOrlando Tobon氏のインタビューなのですが、NYに住む彼は、飲み込んだドラッグの袋が体内で破裂する事故で亡くなった「運び屋」のコロンビア人の埋葬を手伝う活動を行っており、15年足らずの間に400件近くに関わったとのこと。
「どうして死んでしまった人にこだわるんだ?」と言われながらも淡々と活動を続けるTobon氏の姿にも、マリアの持つ確かなプライドのようなものが感じられます。