WordBench 東京でマット・マレンウェッグが語った WordPress の今と未来

昨日開催した「WordBench東京 3月スペシャル『春のマット祭り』」イベントで行われた WordPress 共同創始者マット・マレンウェッグへの質問と回答のうち、いくつかをピックアップしてまとめてみました。

マットとリラックマ
マットとリラックマ。Photo credit: おでさん

Q: これからのインターネットにはどんな変化があると思うか。また、それに対して WordPress はどのように変化していくのか。

マルチデバイスのためのレスポンシブデザインについてはだいぶ対応が進んできている。今後はスピードが重要になってくるだろう。SPDY がこれまでやってきたように、HTTP/2 は高速化のトレンドに影響を与えると思う。WordPress に関しては、Jetpack の Photon CDN などを提供することでサイトがよりすばやく読み込まれる手助けをできればと思う。

ちなみに WordPress.com は DNS のパフォーマンスを計測する DNSPerf で CloudFlare、Edgecast に次いで世界3位。複数のロケーションからの計測結果をまとめたものなので、北米以外でもスコアが高くなるよう力を入れていることが分かるはず。

今回は晴海の株式会社メンバーズの会場をお借りしました。Photo credit: 太田裕己さん

コア開発について

Q: REST API 機能のコアへの統合の状況は?

統合が完了するのは今年の後半か来年の始めあたりになる予定。API は提供し始めたらそれを今後ずっとサポートしなくてはならないので、できるだけ完全な形でリリースしたいので時間がかかっている。ただし、この機能に興味がある人は WP REST API (WP API) をすぐにでも使ってみてほしい。コアに含まれる内容も似たようなものになるので、今すぐに使い始めることもできる。

Q: GitHub を使ったコア開発の状況は?

実際のところ、あまり進んでいない。コア開発者の中には、プルリクエストの仕組みがあまり好きではない人も多い。その理由は、現在の Trac を使ったプロセスよりもチケット上での複数の開発者によるコラボレーションがしづらいから。個人的には GitHub は好きだし、コア以外のプロジェクト(例えばモバイルアプリなど)はほとんど GitHub 上に移っている。

Q: プラグイン機能の取り込みに付随するコード肥大化に対し、コアチームはどのように対応しているのか。レガシーコードを見直す予定はあるか。

最近ではリリースごとにレガシーコードの見直しも必ず行っている。コードをもっとシンプルにして、高速でセキュアなものにするのが目的。

WP REST API プラグイン
WP REST API プラグインのページ。

Automattic について

Jetpack プラグインはこれからどうなるのか。

Jetpack の最近の大きな機能としては、連携サイトを一括管理できる WordPress.com のインターフェースが使えるようになった。ここから投稿を書くことはもちろん、プラグインやコアの更新、自動更新の有効化もできる。また、各サイトに WordPress.com の二段階認証付きアカウントで共通ログインする機能もある。Jetpack は最初ユーザー(ブログやサイトに投稿する人)向けの機能を増やしていたが、今後は開発者・管理者向けにサイトをもっと管理しやすくする機能を増やしていく予定。

Jetpack 3.3 のセントラル・ダッシュボード対応で何ができるのか

Q: 昨年6月に話していた WordPress.com がアジア太平洋地域にサーバーを追加する件はどうなっているのか。

すでに、シンガポールにデータセンターができている。今後日本・オーストラリア・インドネシアなどにも追加していく予定。

Q: Automattic ではどのような JavaScript フレームワークを使っているのか。

React ベースの独自フレームワーク。将来オープンソース化することを考えている。

WordPress.com の日本向けホームページ
WordPress.com の日本向けホームページ

WordPress への貢献・参加について

Q: 若いユーザーが参加しやすくするためにどのようなことが行われているか。

アメリカの話だが、WordPress は小学校から大学までいろんなところで授業に取り入れられていて、そこで WordPress を知った人が自然に使うようになっている。でも将来的には、教える必要がないくらい簡単に使えるようになるのが理想。

Q: 英語圏以外のユーザーがもっと WordPress や IT の世界で活発に参加するにはどうすればよいか。

まずは翻訳・ドキュメンテーションなどのところで参加してみて欲しい。開発に関しても、英語圏のユーザーではないからこそできることがある。

WordBench 東京「マット祭り」会場の様子
イベント会場の様子。Photo credit: 川井さん

開発に関する質問

Q: WP REST API を使ったサイトの例は?

WordPress.com の新エディター画面は API ベースに開発し、ユーザーがよりすばやく使えて開発もしやすいものになっている。また、先週リニューアルしたばかりのレストランサイト作成サービス Happytables.com も参考になるはず。

Q: ブログやメディアサイトがよく WordPress を使って作られているが、その他に向いているタイプのサイトは?

WP eCommerce、Shopp、WooCommerce といった人気プラグインを使ったオンラインショップのサイトが増えてきている。

Q: WordPress は開発者ではないユーザーにも広く使われているが、それによって古いプラグインを脆弱性がある状態のままで使ったりといった危険も多くなってしまう。これについて対策はあるか。

WordPress コアにはセキュリティチームがあり、プラグインの脆弱性が発見された際には作者とともに解決を図る努力をしている。広範囲で使われているプラグインの大きな問題については、使用しているサイトへのセキュリティ修正部分の強制アップグレード(Hot Fix)を行った例もあった。 今後必要なのはプラグイン作者同士のコラボレーションによる知識の共有。コアのセキュリティ向上で成功したやり方をベースに、そういった動きがあるといいと思う。

Automattic では、脆弱性報告に対する報奨金の額を上げること、そして VaultPress の機能の一部を Jetpack で無料提供していくことでセキュリティ向上に取り組んでいる。

Happytables 3 の画面
Happytables 3 の画面。Photo from Happytables Blog

その他の質問

Q: 忙しい中でたくさんのことをやり遂げるための時間管理のコツは?

自分がやっているのは、

  1. 携帯はおやすみモードにして、気が散る原因になる SNS の通知などを受信しない。
  2. 同じ曲をリピートで聴きながら作業する。
  3. やるべきことを書き出して、一日に何度も確認する。

この3つ。最近はTODO リスト管理に Wunderlist というアプリと Momentum という Chrome 拡張を活用している。

Q: この間パキスタンで WordPress.com サイトがブロックされたというニュースがあったが、これは WordPress が掲げる「パブリッシングの民主化」というゴールと反する動き。これについてどう考えているか?

WordPress.com では表現の自由を尊重するため、ユーザーのコンテンツの検閲は行っていない。これによってブロックされるようなことがあれば、それは仕方ない。中国、トルコ、ブラジルなどでも似たようなことは起こっているが、それを防ぐために検閲をする予定はない。


通訳担当で、メモを取っていたわけではないので記憶をベースに書いていますが、間違いなどあればご指摘ください。

川井さん、森山さん、マットと。
川井さん、森山さん、マットと。Photo credit: 川井さん

ちなみに今回の来日の主な目的は、ブルーボトルコーヒーの投資家のひとりとして東京の新ショップを見学したりするツアーに参加することだったそうです。ちょうど桜の季節でもあり、日本の美味しいものや良い気候を堪能しているようでした。次回はいつになるのか分かりませんが、また機会があればいいですね!


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