Automattic について書かれた本「マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた」

Automattic や WordPress.com について書かれた本の日本語訳「マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた」を読んでみました。

Automattic の書籍
Automattic についての書籍の原著と日本語版

原著は「イノベーションの神話」、「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」などを書いたスコット・バークンが2013年に出した、 “The Year Without Pants” というもの。日本語化にあたって内容がサクッと分かるタイトルに変更されていて、カバーのイラストもまったく雰囲気が違っています。原題よりも “The Future of Work” という副題が目立つレイアウトで、こちらの方がビジネス書として手に取りやすそうですね(赤いパンツの表紙は恥ずかしい!という声が社内でも少なからずありました…)。

スコットが Automattic で働いていたのは2010年からの1年半。ずいぶん変わった部分もありますが、その頃の会社の雰囲気を思い出しながら改めて懐かしく読みました。

一般向けの読みやすい翻訳

日本語で読むと「ワードプレス・ドットコム」とか「オートマティック」とか、見慣れた固有名詞がカタカナで書かれているのが新鮮!IT系ではない読み物らしい感じがして良いです。

その他日本語としてはあまり浸透していない横文字の用語が多くて翻訳者の衣田さんはきっと大変だったと思いますが、一般の方向けにも分かりやすくなるよう訳してあって読みやすかったです。2015年の現状に合わせてちゃんと訳注で補足されていたり、丁寧に説明されているなーと思う部分もたくさんありました。

ごく個人的な感想

社員という立場でこの本を読むと、ずいぶん赤裸々な内容だなと正直思います。別に会社として大失敗をやらかしたようなことが暴露されているわけではないですが、カオスな部分も未熟な部分も、そして重要なキーポイントまでまるごと書かれている。スコットは「信頼」というキーワードを本の中で何度も繰り返していますが、実際に彼と Automattic のマットやトニーの間にもそれがしっかり存在していたからこそ、この本が完成して世に出されたと言えます。

スコットが描写する細かい仕事内容なんかは、外部の人が読むにはやや詳しく書きすぎで本題から興味が逸れてしまわないかなと心配になったりもしましたが、WordPress.com の裏側を知りたいという方にはきっと面白いと思います。Jetpack プラグインが命名されてから誕生するまでの話もあって、こちらも他では読めない内容になっています。

Automattic Lounge
サンフランシスコにある Automattic のラウンジスペースも書籍の最後で少し紹介されています。SF 在住の数人はコワーキングスペース的に利用しているとか。
Automattic Meetup SF 2013
Automattic ラウンジで開かれた2013年の全社総会の様子。

「オフィスのない会社の働き方」のまとめは10個の箇条書きとして Amazon.co.jp の商品説明セクションでも読めます。テキストを使ったコミュニケーションや、チームの生産性を上げる方法など、リモートワークに限らず役に立つ部分も少なくないはずです。Automattic の採用している手法は WordPress.org のオープンソース活動の経験に基づいたことも少なくないので、参加者がボランティアで関わっているような仕事以外のプロジェクトをうまく進めるためにもヒントになると思います。

未来ではなくて現実

リモートワークが先進的な働き方といった感じで取り上げられることがここ数年は多くなりましたが、Automattic はすでに10年近くこのスタイルを続けています。この本を手に取れば、「遠い未来にそういうことが可能になるかもしれないな」と思うだけではなくて、「実際に今こういうことも可能なんだ」ということを実感できるのではないでしょうか。

在宅勤務を成功させるための万能薬はありませんが、それが必ず失敗するという誤解もまた事実ではありません。スコットが過ごした Automattic での日々をオープンにしたことで、リモートワークについての謎が少しは解けるはず。この本がきっかけで、抱えている問題を解決するために伝統的ではない働き方を選択してみようという会社が現れて、今よりもっと幸せに働ける人が増える社会が実現すればいいな、なんて思っています。

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