カテゴリー: 7月 2009

GPLは WordPress を不自由にするのか?

WordPress のライセンスである GPL が保証する自由についての意見をマットがブログに書いています。先日迎えたアメリカの独立記念日にからめたエビソードも添えられて、うまくまとまっているなと思うので、英語ですがよかったら原文も読んでみてください。

ちょっと長いので日本語で解説的なものをしてみます。

事の始まり(?)は MarsEdit などのソフトを作っているダニエル・ジャルカットのブログ記事「Getting Pretty Lonely」。先日の「テーマも GPL ライセンス」という告知の後に書かれたこの記事で彼は、「WordPress は GPL ライセンスだ、というのを説かれる度に冷めた気分になってしまう。もっと本当に自由な、おおらかな基準のライセンスの方が自分にはしっくりくる」「GPL ライセンスはプロジェクトに参加しにくくさせる効果がある」というようなことを述べています。

GPL は「公開されたソフトウェアは、誰でもが利用・再配布・改変できるライセンスを継承しなくてはいけない」という「コピーレフト」という考え方をとっています。これは、自由を守るための不自由なのでしょうか?

マットの意見は以下の通り。

  1. 本格的にサイトを考えているクライアントのうち、GPL だからといって WordPress の利用を選択しなかった例はいままでにない。また、競合ソフトウェアと比べた現在の WordPress の普及状態を見ると、ライセンスのせいで導入にマイナスの影響があったという主張はしにくいと思う。
  2. WordPress ではサードパーティ拡張機能、プラグイン、テーマのコミュニティが非常に盛ん。ライセンスが GPL にもかかわらずこうなっているわけではなくて、逆に GPL のおかげ。
  3. たとえば WordPress テーマでしばらく制限的なライセンスが多く使われていたように、GPL が実際には適用されていない状態も何度も目にしてきた。こういうサイクルが始まるといつも、開発者が再度コードをオープンにし始めるまで、その部分での WordPress のイノベーションが失われる。

さらに、以下のように記事を結んでいます。

GPL は、(開発者ではなくて)ユーザーの自由を保護するために作られました。大統領ではなくて、国民を守るために作られたアメリカの権利章典と同じです。GPL は、開発者とユーザーの間にある非常に不均等な力関係に対して抑制と均衡を取り入れてくれます。GPL が言おうとしていることはひとつだけで、それは「このライセンスの制作物や同派生物を使うユーザーの権利を奪ったり侵したりすることはできない」というものです。他人の自由を侵害しないなら、それ以外のことはほとんど何をしてもかまわないんです(どこかで聞いたことがあるフレーズですよね?)。

ソフトウェアの自由というのは僕にとって上記のようなことで、そのために争ったり擁護することが簡単ではなく、人気のないことでも、やろうと思うほどに強く信じています(特にこの週末に、イギリスからの「フォーク(分岐)」であるアメリカの独立記念日を祝いつつそう思いました)。

コメントで、「でも、GPL に従うとすると、他の人が作ったプラグインやテーマをダウンロードして、自分のサイトにアップして売ったりもできるってことだよね?これじゃソースを販売するビジネスがやっていけないんじゃないの?」という意見がありますが、これに対し、「実際にそういうことが起こった事もあるけど、他のライセンスのプログラムが海賊版に影響された以上の大きな影響はないと思う。WordPress.com もこれまでにそういう競合者がいたけど、結局はコケて僕たちのサービスのユーザーを増やすことにつながった」と答えています。

あくまで GPL へのポジティブな姿勢を崩さない WordPress ですが、これを理想主義すぎる、非現実的、かたくなすぎる宗教みたい、などなど、いろいろ批判する方法もあるでしょう(って今、批判してたわけではありませんよ! :D )。

オープンソースでもそうでなくても、ソフトウェアの開発プロジェクトには色々な目的があると思いますが、WordPress について少なくとも言えるのは、このプロジェクトの第一の目的はソースの代償として一部の人が大儲けをすることではないということです。だからといってクライアントのためにプラグインを開発したり、WordPress テーマを作ってお金をもらう事が悪いわけではないし、私自身もそうしてきた一人です。

でも、考えてみれば、こういったことが堂々と、自由にできているのは WordPress が GPL ライセンスによるソースの公開と共有を推進して、ソフトを成長させてきてくれたからこそ。WordPress の開発者たちはその連鎖を広げて、もっと便利なツールにしていくことや、そのツールを使って利用者がいろんな自由を手にすることを望んでいるんだと思います。利用が強制されているわけではないので、それに賛同できない人は他のライセンスのソフトを元にするなり自分で新しく作るなりすればいいだけだと思います(排他的に言っているのはなくて、現状から言ってそうするのが自然だと思うので)。

というわけで、タイトルの質問、「GPLは WordPress を不自由にするのか?」の答えは、私は NO だと思います。

WordPress.com と WordPress.org の名称混乱問題

「もし今のようになることを知っていたなら WordPress.com は違う名前にしていた」と両方の創始者であるマットが話しているのを聞いたことがありますが、レンタルブログの WordPress.com と、オープンソースプロジェクトの WordPress.org の名前が似ていることから、かなり混乱を招いている状態が最近また悪化しているようです。

先日、「ロングテール理論」の提唱者であるクリス・アンダーソンが「Free: The Future of a Radical Price」という新刊誤解をしたまま WordPress について書いたことが指摘されています [1]。さらに、「WordPress.com は WordPress のブランドイメージに悪影響?」という議論も。

日本ではこの状況は逆転していて、「WordPress」と聞くと WordPress.org の方を先に思いつく人の方が多いと思いますが、「Free」が邦訳されたら誤解が広まってしまいそうで心配です。アメリカなど WordPress.com レンタルブログサービスが好調な国では、こんな声が見受けられます。

  • WordPress って無料版と有料版があるんだよね?
  • WordPress.com の方が昔からあるんじゃないの?
  • WordPress.org って Automattic が運営しているプロジェクトで、インストール型ソフトはこの会社の製品でしょ?
  • WordPress.org の主要開発者はみんな、WordPress.com で働いてるんだよね?

ちなみに上記はすべて間違いですのでご注意を!

私自身は昔から .org の方を使っていて .com の方はそちらをベースにできた別サービスという認識があったので、こういった誤解を耳にする度に意外な気がしていた時期もありました。しかし、プログラマとかデザイナーではなくて PR (広報担当) 系の人が多くいる集まりとか、ローカルな WordPress Meetup に顔を出し始めて、実際にサイト作りに深く関わっている人以外の間では、WordPress.com のほうがずいぶんポピュラーなんだなあと実感するようになりました。

考えてみると当然で、Web 制作者のツールのことなんて興味がない人の方が世の中には多いし、でも友達のブログの URLで wordpress.com って入っているのを見たことあるな、とか、無料ブログが作れるサービスで検索したら WordPress.com にたどり着いた、ということのほうがよくあるのでしょう。

雑誌 Wired の編集長でもあるアンダーソン氏ですが、オンライン版の Wired.com では、4月にブログを TypePad から WordPress.com の VIP サービスに移行しています。Web 技術に詳しく、雑誌のサイトを通して WordPress に関わっている彼でも勘違いしてしまうということは、相当分かりづらい状態なのでしょうね。

冒頭にも書いた通り、このことについては創始者や開発陣も「やり直せるならそうしたい」という気持ちなのではないでしょうか。そうは言ってもやり直しすることは不可能なので、解決策を考えていくしかないわけですが、成長してしまったサービスやソフトウェアの名前やドメインを変えるのはなかなか悩ましい問題です。

追記:
[1] Scribd.com にてこの本の無料 PDF を読む事ができます。問題の内容は259ページのフリーミアム(フリー&プレミアムの造語)の部分で、「ベーシックバージョンは無料、高機能バージョンは有料。これは Automattic 社が WordPress レンタルブログで採用しているモデル」と書かれているので、マーク・ジャクィスが指摘した部分はどうも修正されているようです!


前の記事にみやざわさんがくれたコメントで、やっぱりまだ WordPress に関して謎(?)や疑問がいろいろあるんだな、と改めて思ったので、こういう内容にしてみました。ひき続いて、いろんな方面の謎を解いていきたいと思います!

商用サポートつき GPL テーマを集めた公式ディレクトリページ

WordPress.org のテーマディレクトリに、「Commercially Supported GPL Themes(商用サポートありの GPL テーマ)」というページができました。これは、ダウンロードファイルやデモをリンクしている WordPress テーマディレクトリ に対し、GPL ライセンスのテーマを配布しながら有料サポートなどのサービスを行っている外部サイトを紹介する「ショーケース」です(WordPress テーマディレクトリ掲載テーマと重複するものもあり)。

Commercially Supported GPL Themesこのページには、「GPL ライセンスとはすべてがコストゼロでなければいけないわけではありません。ソフトウェアやテーマを手にした際に、それを自由に使うことを制限しないということです。」と書かれていますが、WordPress 本体にしろ、テーマやプラグインにしろ、商用& GPL ということは両立する、というのを強調しています。

GPL テーマ配布サイトのビジネスモデル

ここに掲載されているテーマ配布サイトのビジネスモデルは色々。大きく分けると、以下のようになります。

  1. 配布サイト上のファイルにアクセスするために料金が必要
  2. 配布ファイルをダウンロードするために有料会員登録が必要
  3. 誰でもダウンロードできるけれど、サポートは有料

1と2は、「有料テーマ販売サイト」と言えそうな気もしますが、改変&再配布が可能なライセンスということで、あえて上記のような書き方をしています。

どこも、量より質と言う傾向が強く、広告などの収入ではなくてあくまでテーマに関連するサービスを提供しているというのが特徴です。

掲載条件

このディレクトリに掲載されるための条件は4つ。

  1. 画像や CSS ファイルも含め、100% GPL ライセンスのテーマを配布していること。
  2. プロフェッショナルサポートがあること(カスタマイズサポートはオプション)。
  3. サイトが完成しており、デザインが良く、情報が最新で、プロらしい見栄えであること。
  4. あなたに関する「俳句」を含めて送ること。

最後のひとつ、英語で五七五というのが一番難関かもしれませんね :P

このページの重要性

長い目で見ると、オープンで自由に使える、質の高いテーマが充実していることは WordPress の人気や継続にはとても大事なこと。そのためにはその作者さんたちを応援していく仕組みも必要です(プラグイン作者さんを応援する手段も…)。

「WordPress ってテーマがたくさんあるのはいいけど、アップグレードごとに対応するか不安」と言う声も聞くので、サポートがしっかりした良いテーマを紹介することで、メンテナンスを継続していっているテーマを選びやすくなるという利点もあります。

日本でも「め組」テーマが GPL ライセンスへの変更を発表しています。このページの意図通りの、テーマ作者がビジネス面でも成功できる→WordPress への貢献のインセンティブができる、というような好循環を期待したいと思います。

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